最近よく聞く「キダルト」ってどういう意味?
これって新しい言葉なの? いつからあるんだろう?
ネコ私も最近この言葉を知ったのですが、意味や由来を調べてみると、ずいぶん昔からある言葉であることが分かりました!
さらに自分も実はキダルトであることが判明したという…。
この記事では、「キダルト」という言葉の意味や語源・いつ頃から使われ始めた言葉なのかをなるべく一次情報まで遡り、わかりやすく解説しています。
「キダルト」はKid+Adult
キダルト(kidult)とは、英語の kid(子ども)とadult(大人)を組み合わせた言葉です。
キダルト向けのおもちゃ、キダルト消費、キダルト市場などと使われるのを目にすることもあるでしょう。
現在の日本では、子ども向けにつくられた玩具やアニメ、キャラクターなどを大人が楽しむこと、またはそのような大人を指す言葉として使われています。
小学館『デジタル大辞泉』にも、現在はこの意味で掲載されているので、もしかしたら、「これは日本のマーケティング用語?」と思われている方も多いかもしれません。
でも、実は歴史を探ってみると、実はこの言葉は1940年代のアメリカですでに使われていた言葉であることが分かりました。
少なくとも1940年代には「kidult」が使われていた


今回、一次資料が確認できた範囲では、少なくとも1942年には、アメリカのラジオ業界で “kidults” という言葉が使われていたということが分かりました。
1942年の米国ラジオ業界紙 Radio Daily には、昔話を現代風にアレンジしたラジオ番組 Streamlined Fairy Tales の紹介が掲載されています。
そこでは、この番組について、
“stories to ‘kiddies’ and sophistication to ‘kidults.’”
ーRadio Daily, 1942年7月号, p.76, “Streamlined Fairy Tales”
と紹介されています。
「子どもには物語を、キダルトにはちょっと洗練された面白さを」という意味合いです。
“kidult”のニュアンスとしては「子供のような大人」「子供のような心を持つ大人」という意味合いでしょうか。
番組の対象も「子どもと家族全体」とされています。
また、1950年の同じ業界紙には、この番組の広告として、
“For Kidults 6 to 60.”
ーRadio Daily–Television Daily, October 25, 1950, p. 5, Harry S. Oman Productions, advertisement for Streamlined Fairy Tales.
という表現も登場します。
これは6歳から60歳までの「キダルト」という意味で、子供から大人までの幅広い年齢層を“kidult” という言葉で表しています。
なので、今のキダルトとは少しニュアンスが違いますが、大人と子供を合わせた対象を指す言葉として“kidult”という言葉は使われていたようです。
なお、今回目視で確認できた最も古い資料が1942年だったというだけで、「kidultという言葉が1942年に生まれた」という意味ではありません。
今回の調査では辿り着けなかった、さらに古い用例が存在する可能性もあります。
日本ではいつから「キダルト」と呼ばれていた?
では、日本ではいつから使われているのでしょう。
現在の解説記事には「2000年代から日本でも広まった」といった記述が見られますが、出典が示されていないものもあります。
今回、調べた中では、少なくとも2006年には、日本でも「キダルト」という言葉が使われていたことが確認できます。
大修館書店が発行していた『月刊言語』では、2006年に「キダルト」が新語として取り上げられていたことが、後年の新語研究から確認できました。
ただし、現時点では何月号に掲載されたのか、また、当時どのように説明されていたのかまでは確認できていません。
こちらは実際の『月刊言語』を確認して、追記する予定です。
そのため、ここで言えるのは、「キダルトという言葉が日本で生まれたのが2006年」ということではなく、少なくとも2006年には、新語として取り上げられる程度には日本語圏に入ってきていたということでしょう。
ただし、2006年当時の「キダルト」が、現在と同じ「子ども向けの玩具やキャラクターなどを楽しむ大人」という意味で使われていたのかは、現時点では確認できていません。
では、現在のような意味で「キダルト」が使われるようになったのは、いつ頃なのでしょうか。
2024年、ついに玩具業界の正式なカテゴリーに


一つの明確な転換点は2024年にあるようです。
日本玩具協会が主催している東京おもちゃショーで発表される「日本おもちゃ大賞」は、2024年にそれまで「ハイターゲット・トイ部門」という名称だった部門を、「キダルト(Kids+Adult)部門」へと名称変更しました。
ここで「キダルト」は、主に大人をターゲットとした子供向け玩具を表す、業界の正式なカテゴリー名に登場します。
その後、2025年にハピネットが実施した調査では、日本のキダルト人口は約535万人、市場規模は約780億円と推計されています。
少なくともこの頃には、「キダルト」はおもちゃ業界の中で、大人の消費を表す言葉として定着してきていたようです。
「キダルト」という言葉の日本での広がり
ここまで調べてみると、「キダルト」という言葉が日本でどのように使われてきたのか、少しずつ流れが見えてきます。
少なくとも2006年には、「キダルト」は日本で新語として取り上げられていました。
また、玩具業界誌『トイジャーナル』が運営する『おもちゃ情報net.』では、2000年代にヒットした「∞プチプチ」「ホームスター」「小型RC」などを、現在の「キダルトの兆し」を感じさせる商品として振り返っています。
そして、2024年には「日本おもちゃ大賞」の正式な部門名に「キダルト」が採用され、2025年にはキダルト人口や市場規模を推計する調査も行われるようになりました。
こうして見ると、「キダルト」は最近突然生まれた言葉ではなく、日本でも少なくとも20年ほど前から使われていた言葉が、近年になって玩具市場を表す言葉として、より目に見える形で使われるようになってきたようです。



私が最近になって「キダルト」という言葉をよく目にするようになったのも、この流れの中にあるのかもしれませんね。
まとめ
以上が、「キダルト」という言葉の意味や語源・いつ頃から使われ始めた言葉なのかを一次情報まで遡って調べた情報のまとめでした。
簡単におさらいしていきましょう。
・「キダルト」は kid+adult を組み合わせた言葉
・1942年のアメリカですでに使用例が確認できる
・日本では少なくとも2006年には新語として登場
・2024年には「日本おもちゃ大賞」の正式な部門名に
・2025年には国内市場が約780億円と推計されている
私自身、「キダルト」という言葉には馴染みがなく、「おもちゃを楽しむ大人」は自分とは違う世界の人たちだと思っていたところがありましたが、調べていくうちに、「私これやってるわ」と思う部分も沢山ありました(笑)。
今後も「キダルト」という言葉の周辺について、調査を続けてみたいと思います。
参考資料・文献
『Radio Daily』1942年7月号 p.76
『Radio Daily–Television Daily』1950年10月25日号 p.5
小学館『デジタル大辞泉』(コトバンク)
金鎭淑(2013)『日本語と韓国語における新語の対照研究―新語の構成と使用を中心に―』広島大学大学院教育学研究科 博士論文
『おもちゃ情報net.』ヒット商品とできごとから振り返るおもちゃ業界の50年【第4回 2000年代】
株式会社ハピネット「キダルトに関する実態調査」
*ページ番号はPDFのページではなく本誌のページ番号です










